卍 / 谷崎潤一郎

いやいや
これ面白かった。すごく引き込まれた。
中国語の試験当日、図書館でまわり勉強してるのに、あたしこれ読んでた。
課題本もこのペースで読んでほしいものです。

谷崎潤一郎も非常に著名な文豪ですが、読むのは初めて。
最近アレですね、明治大正昭和初期あたりの大御所作家読むこと多いね。
今まで近代小説に偏りすぎてたのか知らん。
これからはちょいちょい読んでいきたいね。
そこらの時代って名作がたくさんあるようなんだもの。

「卍」は、レズビアン(バイセクシャル?)の物語。
まずこのテーマに衝撃うけた。
昭和初期の小説に、こんなテーマがあるなんて。
主人公の園子が、過去を回想するかたちで物語は語られていく。
そしてその語り口は、すべて関西弁である。
*1
これがまた、なんともいえずいいテンポで、妖しく独特な雰囲気を醸し出す。

主人公の園子は、旦那もちの20代前半。
彼女は趣味で美術学校に通うが、そこで光子という絶世の美女に心惹かれる。
ちなみに、園子も光子もかなり金持ちの階級だ。
彼女らの友情は、すぐ熱情に変わる。
光子が園子のモデルをする場面で、それははっきりとカタチを為してしまう。
園子の家の寝室にふたりきり、光子の裸体を目にしたとき、その美しさに園子は動転する。

  -「ああ、憎たらしい、こんな綺麗な体してて!うちあんた殺してやりたい」

そして口付けされた光子は、園子の熱情にひきずりこまれるように呟く。

  -「うちあんたに殺されたい、殺して」

 昼下がりの寝室、白いシーツ、突然彼女たちに火がつく。
とんでもなく官能的で、そして激しい場面。

愛と憎悪。
この話の中で、ぐるぐる渦を巻いてるもの。
勘付いた旦那にもその場しのぎを繰り返し、二人は離れられなくなっていく。
ある日、光子に彼氏がいることが発覚する。
光子には、美貌に加え、人の心を操る稀有な才能があった。
男の言うことと、光子の言うことの食い違いに苦悩する園子。
このころの彼女は気の毒で見ていられない。
光子はまるで魔性の女。女王様。恐ろしい。

のち、光子の要望で男を引き剥がすことに成功するが
なんと今度は、園子、光子、旦那の三つ巴になるという…。
最後がまた救われない。光子こわい。依存ってこわい。
若干ドタバタしっぱなしの印象はうける。
が、その分また物語から目離せなくなるから、まあいいかな。

甘美。妖艶。愛の苦しさ。
真っ赤な毒苺、て感じの話でした。
耽美派、といわれていたワケがわかった。
ちょっとあらすじ書きすぎたかな今回。

ほんと、非常に面白い本でした。
愛は恐ろしいものです。

 

卍 (新潮文庫)

卍 (新潮文庫)

 

 

*1:正確なものではなく、谷崎さん創作の関西弁らしい